分子栄養学カウンセラー・家庭技能検定資格保有・栄養士(卵)
農産物の安全性や環境に対する消費者の関心が高まる中、近年では、慣行栽培に代表される伝統的な栽培方法に加えて、環境や健康に配慮した栽培方法が注目されています。
その中でも、有機栽培や無農薬栽培、特別栽培などが代表的な栽培方法として挙げられます。
本記事では、慣行栽培、有機栽培、無農薬栽培、特別栽培などの栽培方法について詳しく解説し、それぞれの特徴やメリット・デメリットなどを紹介します。
それぞれの栽培方法の違いを理解することで、自分にあった野菜や果物を選びやすくなりますよ。
・それぞれの栽培方法のメリットとデメリット
・それぞれの栽培方法に向いている人の特徴
慣行栽培とは?
慣行栽培は、野菜や果物などの作物を育てる際に、農薬や化学肥料を使用する伝統的な栽培方法のことを指します。
農薬は、作物に害を及ぼす害虫や病気を駆除するために使用されます。
一方、化学肥料は、植物の成長を促進するために、必要な栄養素を土壌に与えます。
慣行栽培には、以下のようなメリットがあります。
- 収量が安定する
- 病害虫による被害が少なくなる
- 肥料を適切に管理することで、植物の成長を促進することができる
ただし、慣行栽培には以下のようなデメリットもあります。
- 農薬や化学肥料の使用による環境汚染の可能性がある
- 土壌の痩せやすさが生じる可能性がある
- 作物の品質や風味が劣化することがある
このため、近年は無農薬や有機栽培、特別栽培など、環境に配慮した栽培方法が注目されています。
有機栽培とは?
有機野菜とは、化学肥料や農薬の代わりに、魚粉や油粕などの植物性・動物性由来の「有機物肥料」を使用して育てられた野菜のことです。
有機野菜の認定には、農林水産省が定めた「有機JAS規格」の条件を満たす必要があります。
具体的には、以下のような基準が規定されています。
- 化学合成農薬や肥料の使用を制限
- 遺伝子組み換え作物の使用を禁止
また、有機農産物を生産する場合、化学合成肥料や農薬を使用していた土地を2年以上使用しないことが求められます。これにより、土壌中の化学物質を減らし、有機栽培に向いた土地を確保することができます。
これら有機JAS規格を満たすことで、野菜は「有機野菜」として認定され、パッケージには「有機JASマーク」が表示されます。また、オーガニック野菜というのも、有機栽培・有機野菜と同じ意味で使われます。
有機栽培は完全無農薬ではない
有機野菜の栽培には、化学肥料や農薬の使用が制限されていますが、有機野菜は完全無農薬というわけではありません。
JASが認定している31種類の農薬は、栽培に使用しても問題ないと規定されています。
つまり、JASの有機野菜の基準を満たしつつ、一部の農薬を使用した栽培も認められているのです。
また、有機野菜の捉え方や方針は農家によっても異なっている現状があります。JASの基準を厳密に守り、農薬も完全無使用の野菜を「有機野菜」として捉えている農家もあれば、JASの基準を少し緩め、一部の農薬を使用した栽培を行っている農家もあります。
つまり、有機野菜の定義は一定ではなく、農家によって異なる場合があるということです。
有機野菜のメリット
有機野菜を選ぶメリットはたくさんあります。ここでは、健康面、味、環境面でのメリットをご紹介します。
健康面でのメリット
- 農野菜に含まれる化学物質の量が少なくなり、安全性が高くなる。
- 栄養素が豊富で、特にビタミンやミネラルの含有量が高い場合がある。
有機野菜は、病気や害虫から身を守るため「フィトケミカル」と呼ばれる成分を生成します。フィトケミカルはリコピンやビタミンC、ポリフェノールなどの栄養素を含んでいるものが多いのが特徴です。このフィトケミカルによって、有機野菜の栄養価がさらに高まることが期待できるのです。
味のメリット
- 有機野菜には、土壌の中に豊富に含まれる微生物が生育に貢献し、味わいが良くなることがある。
- 農薬や化学肥料を使用しないため、野菜本来の味が損なわれることがなく、より本来の風味を楽しめる。
化学肥料や農薬を過剰に使用すると、野菜の成長スピードが速すぎて、旨味や栄養素が追いつかなくなることがあります。そのため、見た目は立派でも風味がイマイチは野菜ができあがってしまうことがあります。
しかし、有機栽培では、野菜は本来の成長スピードで育つため、濃厚な旨味をしっかりと蓄えます。その結果、野菜の本来のおいしさを味わうことができるのです。
環境面のメリット
- 土壌や水質、大気などの環境汚染を減らすことができる。
- 微生物や有機物を活用するため、土壌の健全性が高まり、土壌生態系のバランスを保つことができる。
有機野菜のデメリット
- 有機栽培には、多くの人手や時間が必要で、生産性が低く、作物の収穫量が少なくなることがある。
- 有機野菜の価格が高くなる場合がある。
無農薬栽培とは?
有機野菜の栽培では、JAS認定の農薬であれば使用しても問題ありませんが、無農薬栽培は農薬を一切使用しない方法です。
ただし、無農薬栽培には厳格な基準や規定がなく、過去に使った農薬が土壌に残っていたり、近隣の畑から農薬が拡散したりすることもあるため、「無農薬」と表記することは消費者に誤解を与えてしまいます。このような理由から「無農薬栽培」という言葉は、国が表記を禁止しているため、使ってはいけません。
そこで「無農薬」に変わる表記として認められているのが、「特別栽培」です。
特別栽培とは?
特別栽培農産物は、農産物が生産された地域の慣行レベルと比較し、節減対象農薬の使用回数が50%以下、化学肥料の窒素成分量が50%以下という基準に適合する農産物のことです。つまり、有機肥料を除く農薬と化学肥料の使用を基準値以下に控えた野菜が「特別栽培農産物」として認定されます。
しかし、周囲の農家が多く化学肥料や農薬を使用している場合、その量が50%以下に削減されてもその絶対量は大きくなります。
また、特別栽培農産物は、有機JAS規格のように第三者機関による認証を受けていないため、生産者が自己申告に基づいて「特別栽培」と表示することができます。
そのため、生産者の主観によって特別栽培に該当するかどうかが決められることになり、消費者にとってどの程度の化学肥料、農薬が使用されているのか判断が難しいというデメリットがあります。
そのようなデメリットはあるものの、特別栽培は慣行栽培よりも健康や環境に良い影響を与える栽培方法であると言えるでしょう。
私にはどんな栽培方法の野菜・果物が向いてる?
これまで、有機栽培や特別栽培、慣行栽培という野菜・果物の栽培方法について、それぞれの特徴やメリット・デメリットを見てきました。
では、自分にはどの栽培方法が一番あっているのか、見ていきましょう。
慣行栽培の野菜
- 値段が安く手軽に手に入れられる野菜を求める人
- 農薬や化学肥料に敏感でない人
- 外観や品質よりも価格を重視する人
この場合は一般的なスーパーで購入するのがGOOD!様々な野菜をお手軽に手に入れることができます。
有機野菜
- 健康や環境に関心が高い人
- 食品の品質や生産方法にこだわる人
- 安心・安全な食品を求める人
- 農薬や化学肥料に敏感な人
有機野菜を購入できる場所は、スーパーや野菜の宅配、農家さんから直接取り寄せなど、様々な方法があります。近年オーガニック専門のスーパーができるなど、以前より身近になってきたものの、まだまだ有機野菜の取り扱いは多くないというのが現状。近くのスーパーで手に入らない場合は、有機野菜専門の野菜の宅配などのサービスを利用するのがGOOD。
特別栽培の野菜
- 農薬や化学肥料を極力減らした野菜を求める人
- 無農薬野菜を求めるが、地域に無農薬野菜がない人
- 健康や安全性には関心があるが、有機野菜りも価格が少し安い野菜を求める人
特別栽培の野菜は、スーパーの商品説明の札やパッケージに記載されていることがあります。また、食材の宅配でも特別栽培の野菜を手に入れることができます。
この記事のライター:Fonfon 分子栄養学カウンセラー・家庭技能検定資格保有・栄養士(卵) fonfon 「食べるもので身体の中から美しく、健康に」をモットーに、食の安全や健康の情報を発信しています。 仕事や育[…]
まとめ
本記事では、有機野菜、特別栽培の野菜、慣行栽培の野菜それぞれの特徴やメリット・デメリットについて紹介しました。
自分自身の健康や環境問題に対して意識が高まる中、食材選びも重要なテーマのひとつとなっています。自分自身がどのような栽培方法の野菜を選ぶかによって、健康や地球環境に与える影響も変わってきます。
しかし、食べる野菜を有機野菜に限定したいと思っても、スーパーでの取り扱いが限られていたり、地域によっては取り扱っていない場合もあります。そんな時は、有機野菜の宅配サービスを利用することを検討してみてもよいでしょう。宅配サービスでは、品種も豊富で、スーパーではなかなか見かけない珍しい野菜も楽しめるのが魅力です。
この記事のライター:Fonfon 分子栄養学カウンセラー・家庭技能検定資格保有・栄養士(卵) fonfon 「食べるもので身体の中から美しく、健康に」をモットーに、食の安全や健康の情報を発信しています。 仕事や育[…]