分子栄養学カウンセラー、仮定技能検定資格保有者、栄養士(卵)
- 分子栄養学カウンセラーとは?
- 分子栄養学は、栄養素が体内でどのように代謝され、細胞や分子レベルでどのような影響を及ぼすかを研究する学問分野です。分子栄養学は、遺伝子、タンパク質、代謝物、およびその他の生体分子と栄養素の相互作用を研究することで、健康や疾患の病態生理を理解することを目的としています。分子栄養学は、生物学、生化学、栄養学、遺伝学、医学、農学などの複数の学問分野を融合させた研究分野であり、個人の遺伝子や生化学的特性に基づいた個別化された栄養指導を行います。
「グルテンフリー」という言葉を最近よく聞くようになりました。具体的には何を指す言葉なのでしょうか?
グルテンフリーとは、小麦、大麦、ライ麦などの穀物に含まれるたんぱく質「グルテン」を含まない食事のことを指します。
グルテンには、アレルギーを引き起こす可能性がある人や、セリアック病という病気を持つ人にとって問題があるとされています。
また、それら病気を持たない人たちにとっても、グルテンフリーの食事は、健康的で美容に効果があるとも言われています。
本記事では、グルテンフリーの基本的な情報や、グルテンフリーの食事のメリット・デメリット、グルテンフリーに適した人などについてを紹介します。
・グルテンはなぜ身体に悪い?
・グルテンフリーの食事例
・グルテンフリーの効果
・グルテンフリーのやり方
・グルテンフリーのデメリット
・グルテンフリーに向いている人
・グルテンフリーのよくある質問
グルテンフリーとは何か?
グルテンフリーとは、小麦、大麦、ライ麦などの穀物に含まれるたんぱく質「グルテン」を含まない食事のことを指します。
小麦のグルテンは、グリアジンとグルテニンという2つのタンパク質から構成されており、これらのタンパク質が水分と混ざると、強く伸びやすい粘性のある物質となります。グルテンは、小麦粉をこねるときに形成され、パンやパスタなどを作るときに重要な役割を果たしています。
食の欧米化が進んだ現代では、私たちの身の回りにはグルテンが含まれている食品は多数あります。その一部をご紹介します。
パン(食パン、フランスパン、バゲット、クロワッサンなど)、パスタ(スパゲッティ、マカロニ、ペンネなど)、うどん、そば(十割そば除く)、ピザ、パイ、クッキー、ケーキ、ドーナツ、ワッフル、パンケーキ、クラッカー、ビスケット、ハンバーグ、調味料など
グルテンフリーとは、上記のような食品を摂取しないことを指します。
欧米では、有名人がグルテンフリーを取り入れたり、世界的に有名なプロテニスプレーヤーがグルテンを控えることによって、体調が好転したことを紹介した著書がベストセラーとなり、グルテンフリーが一般に知れ渡るようになりました。
「なんとなく不調・だるい」といった不定愁訴の原因はグルテンではないかと考える人たちが、自主的にグルテンを含む小麦粉製品の摂取を控えることで、一部の潜在的なグルテン過敏症罹患者を含む人たちの体調が好転したり、また、同時必然的に糖質の摂取も控えられることによる好効果 (体重減少、肌質改善等)がもたらされたりしたことから、美容やダイエット、健康志向に高い関心を持つ人たちの間でグルテンフリーが注目され、ブームとなっています。
グルテンはなぜ身体に悪い?
グルテンはセリアック病やグルテン過敏症、小麦アレルギー、グルテン不耐症・グルテン過敏症などの原因になることに加えて、それら疾病がない人に対してにも健康に影響を及ぼす可能性があると言われています。
セリアック病・小麦アレルギー・グルテン不耐症、グルテン過敏症とは
セリアック病は、小麦や大麦、ライ麦に含まれるグルテン を摂取することによって異常な免疫反応を起こして自身の小腸粘膜を損傷し、栄養素の吸収能を大きく低下させる自己免疫疾患です。
小麦アレルギーとは、セリアック病患者が自身の体組織を攻撃するような自己免疫反応によるものではなく、食物アレルギーのひとつです。小麦や大麦、ライ麦、オート麦等を摂取すると、それらに含まれるたんぱく質を異物として攻撃する抗体がつくられ、腫れやかゆみ、蕁麻疹といった皮膚症状、気管支閉塞、鼻炎といった呼吸器症状、嘔気、 嘔吐、下痢といった消化器症状のいずれかあるいは複数の症状を示し、重症の場合にはアナフィラキシーショックを起こすこともあります。
グルテン不耐症とは、消化酵素の欠乏や免疫系の反応によって、グルテンを消化できず、消化器系の症状を引き起こす疾患です。
グルテン関連障害のうち、非自己免疫系且つ非アレルギー系の疾患がグルテン過敏症です。グルテン関連障害のうち最も発症頻度が高いが、厳密な診断基準がなく、 セリアック病と小麦アレルギーを否定診断した結果、グルテン過敏症の可能性が疑われます。グルテン過敏症の人は、グルテンを含む食品を摂取すると、身体の異常反応を引き起こすことがありますが、小腸の損傷や消化器系の症状は見られません。
もし身体の不調や症状があって、グルテンを含む食品を摂取することが原因の一つである可能性がある場合は、自己判断せずに医師や専門家の診断を受けることが重要です。専門家のアドバイスを受けながら、適切な対処を行いましょう。
その他健康への影響
最近の研究により、グルテンが腸のタイトジャンクションを広げる可能性が示唆されています。タイトジャンクションは、腸内細菌や毒素、アレルゲンなど有害な物質が腸管内から血流やリンパ管に侵入するのを防ぐための重要なバリアです。
つまり、グルテンは、タイトジャンクションを開き、有害物質が腸管から侵入するリスクを高めることがあるとされています。
ただし、グルテンによるタイトジャンクションの広がりが、すべての人に影響を与えるわけではなく、グルテンに関する健康上の問題については、さらなる検討が必要とされています。
グルテンフリーの効果
グルテンフリーを実践することで得られる可能性のある効果は以下の通りです。ここでは、セリアック病、グルテン不耐症、小麦アレルギーが改善する以外で得られる効果について記載します。
- 頭痛の改善
- 腹痛の改善
- 倦怠感の改善
- 肌荒れが良くなる
- 花粉症や鼻炎の改善
- 睡眠の質が良くなる
- 集中力が増す
- 体重の減少
グルテンフリーにすることで糖質の摂取量が減少するため、糖質を控えることによる身体への影響も考慮されます。
グルテンフリーの効果や実感度合いには個人差があります。グルテンフリーに切り替えたからと言って、必ずしも効果を実感できるわけではありません。
また、1〜2日で実感できる場合は少ないため、健康や美容に関心がある場合は、継続的に取り組むことが重要です。
グルテンフリーの食事例
グルテンフリーの食事は、小麦、大麦、ライ麦、そしてこれらの穀物が含まれる製品(パン、パスタ、クッキーなど)は避ける必要があります。代わりに、グルテンを含む代替品を使って調理することができます。代替品として代表されるものは以下の通りです。
- パン
小麦粉の代わりに米粉やキヌア粉、オート麦粉などを使ったグルテンフリーのパンがあります。日本では、米粉のパンが多く販売されています。米粉パンは小麦粉のパンと比較して、もっちりとした食感があります。米粉には小麦粉にはない独特の風味があり、食べたときに米の甘みを感じることができます。また、米粉は小麦粉に比べて吸水性が高いため、水分を多めに使うことでよりしっとりとした食感です。
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- パスタ
米粉やキヌア粉、レンズ豆などから作られたグルテンフリーのパスタがあります。イタリアの有名なパスタブランドや大手スーパーのプライベートブランドからも様々なグルテンフリーパスタが発売されています。グルテンフリーパスタは大手スーパーや通販で手に入れることができます。
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- シリアル
オートミールやキヌア、米、そばなどから作られたグルテンフリーのシリアルがあります。 - 菓子類
代表的なものには、米粉やキャッサバ粉、アーモンド粉、ココナッツ粉、豆粉、オート麦粉などが使われます。また、グルテンフリーの代替となる材料として、キヌアやアマランサス、チアシード、フラックスシードなどの穀物や種子も利用されています。また、和菓子である大福や羊羹など、日本古来の菓子類もグルテンフリーのものが多く含まれています。
グルテンフリーが世界的なブームとなり、多くの人々がグルテンフリーの生活を実践するようになりました。そのため、市場にはグルテンフリーの商品がたくさん販売されるようになり、食事を我慢することなく、食を楽しみながらグルテンフリーを実践することが可能です。また、自宅で調理する際にも、米粉や豆粉、ココナッツ粉などを使ったグルテンフリーの料理本が豊富にありますので、手軽にグルテンフリーな食事を作ることができます。
グルテンフリーのデメリット
グルテンフリーを実践する場合、以下のようなデメリットが考えられます。
- コストがかかる
グルテンフリーの食品は、小麦粉製品よりも高価な場合があります。また、グルテンフリーの食品が売られていない地域では、入手が難しい場合もあります。 - 食事の選択肢が限られる
グルテンフリーの食品は、小麦粉製品に比べて種類が限られているため、食事の選択肢が制限される場合があります。特に外食などでは、グルテンフリーの選択肢が少ないことがあるため、食事の制限が厳しくなる場合があります。 - 味や食感が異なる
小麦粉にはグルテンが含まれているため、グルテンフリーの代替食品は味や食感が異なることがあります。これは、グルテンが生地を柔らかくする働きがあるためです。また、グルテンフリーの食品には、小麦粉製品よりも多くの油脂分が含まれている場合があるため、食感が変わることもあります。 - 症状改善が見られない場合がある
グルテンフリーにすることで症状が改善される人がいる一方で、グルテンに対する過敏症ではない人がグルテンフリーにすることで症状が改善されない場合もあります。この場合、他の要因による症状が考えられるため、医師と相談することが必要です。 - 代替食材を見つけることに苦労することがある
小麦のパンやパスタの味や食感に慣れていると、満足する代替品を探すことに苦労することがあります。
グルテンフリーに向いている人
グルテンフリーに向いている人は、セリアック病やグルテン不耐症、小麦アレルギー、グルテン過敏症の人に加えて、下記のような人が向いている人と言えるでしょう。
- 原因不明の頭痛がある
- 原因不明の腹痛がある
- 倦怠感がある
- 肌荒れが気になる
- 花粉症や鼻炎の症状がある
- 睡眠に問題がある
- 集中力を高めたい
- 健康全般に関心がある
- 自炊ができる
現代においては、ストレスや加工食品の摂取、不規則な食生活などの要因から、これらの問題を抱える人が多くなっています。そのような状況下で、グルテンフリーを実践することで改善することができる場合もあります。必ずしも効果があるとは限りませんが、気になる症状や体調不良がある場合は、一度グルテンフリーを実践してみることを検討してみると良いかもしれません。
グルテンフリーのやり方
グルテンフリーのやり方は以下の通りです。
- 食品の成分表をチェックする
食品の成分表をよく確認して、小麦、大麦、ライ麦、オート麦などにグルテンが含まれているかどうかを調べましょう。 - グルテンフリーの代替品を探す
グルテンフリーのパンやパスタ、シリアル、スナック菓子など、代替品が多数販売されているので、それらを活用しましょう。\グルテンフリー歴10年おすすめ米粉パン/関連記事食×健康が大好きで、大手化粧品メーカーを退職し、栄養士養成学校にかよう、分子栄養学カウンセラーfonfonです。 グルテンフリー中でも、食べたくなるのがパン! でもグルテンフリーパンって、スーパーでの市販や地元のパン屋さんにも置[…]
- 自炊の工夫
自炊する場合は、小麦粉やパン粉の代わりに米粉やコーンスターチを使ったり、グルテンフリーのレシピ本を参考にしたりすることで、グルテンフリーな料理を楽しめます。グルテンフリーのレシピ本がたくさんありますので、活用するのも一つの手です。 - 外食での注文時に注意
外食する場合は、グルテンフリーのメニューがあるレストランを選び、注文時にグルテンを含まないことを確認しましょう。 - 栄養バランスに注意する
グルテンフリーにするからといって、偏った食事にならないよう、主食を欠かさずに、バランスの良い食事を心がけましょう。
グルテンフリーの効果を実感するにはどのくらいかかる?
グルテンフリーの効果を実感するには、個人差がありますが、通常は数週間から数ヶ月かかる場合があります。グルテン過敏症やセリアック病のような症状が重度の場合、効果を実感するまでにはより長い期間が必要となることがあります。
グルテンフリーについてよくある質問
Q:グルテンフリーはダイエットに効果がある?
A:グルテンが含まれる食品、特にパンやお菓子などには糖質や脂質が多く含まれることがあります。それらを摂取しない場合は、体重減少が見込める可能性があります。ただし、これらを避けるためにグルテンフリーの食品を選ぶ場合、代替品には油分が多く含まれることがあるため、一概にグルテンフリーがダイエットに効果的であると言えるわけではありません。
Q:グルテンフリーで不足する栄養素はある?
A:グルテンフリーを実践することで不足する栄養素は、一般的にはグルテン含有食品から摂取される栄養素ではありません。ただし、パンやパスタなどを置き換えることなく、主食を摂取しない場合は、炭水化物や食物繊維などが不足する可能性があります。主食を欠かさず、バランスの良い食事を心がけましょう。
参考に、小麦に含まれる栄養素は以下の通りです。
- 炭水化物:小麦は主に炭水化物で構成されています。生の小麦粉100g中には約72gの炭水化物が含まれています。
- タンパク質:生の小麦粉100g中には約11gのタンパク質が含まれています。
- ビタミン:ビタミンB1、B2、B3、B6、および葉酸が含まれています。また、小麦胚芽にはビタミンEが豊富に含まれています。
- ミネラル:カリウム、マグネシウム、リン、亜鉛、鉄などのミネラルが含まれています。
- 食物繊維:小麦は食物繊維が豊富な食材の一つであり、主に不溶性食物繊維が多く含まれています。
米と小麦の栄養を比較すると、米は炭水化物が主成分であり、特に消化吸収が速い単糖類のグルコースが多く含まれています。そのため、エネルギー源として重要な役割を担っています。また、米にはビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシンなどのビタミン類や、鉄分、カルシウム、マグネシウムなどのミネラル類が豊富に含まれています。
一方、小麦には、米と同様に炭水化物が豊富に含まれていますが、消化吸収が遅い多糖類の糖質も含まれています。また、小麦には米に比べてタンパク質が豊富に含まれており、特にグルテンと呼ばれるタンパク質が含まれています。小麦に含まれるビタミンやミネラルの量は米と同様に豊富ですが、ビタミンEや食物繊維などの成分が豊富に含まれています。
小麦を米に代替する場合、含まれる栄養素の違いはありますが、グルテンフリーにすることで不足する栄養素はバランスのよい食事をすることで補うことが可能です。
まとめ
グルテンフリーとは、小麦や大麦、ライ麦などの穀物に含まれるグルテンを除いた食事のことです。グルテンに過敏症やアレルギーを持つ人だけでなく、健康や美容に関心がある人にも広がっています。グルテンフリーに切り替えることで、グルテンによる疾患以外にも、原因不明のだるさや腹痛、肌荒れなどが改善される可能性があります。
グルテンフリーの代替品が多数販売されており、それらを活用しながら、我慢することなく、食生活を楽しむことが継続するためのコツです。主食を欠食することなく、バランスの良い食事を心がけることで、グルテンフリーを実践する場合でも、十分な栄養素を摂取することができます。
もし身体の不調や症状があって、グルテンを含む食品を摂取することが原因の一つである可能性がある場合は、自己判断せずに医師や専門家の診断を受けることが重要です。専門家のアドバイスを受けながら、適切な対処を行いましょう。